うちなー滞在記vol.7「やちむんの里はどうしてできた?〜やちむんの美しさと職人たちの想い〜」

梅雨明けをした沖縄は連日の真夏日。そして台風。

先日の台風6号は沖縄本島への直撃は免れたものの、先島諸島(宮古・八重山)は暴風域となり、しかも台風の速度がとても遅いので(私がニュースで見た時の時速はなんと9㎞/時)、雨や風の影響が3~4日間も続きました。

そんな台風でしたが、発見もありました。

それは、あんなに大雨が続いたというのに水はけがとても良いのです。私の住む地域では、たとえば道路の側溝から水があふれているというような事はありませんでした。

雨が上がり、数時間もすれば(もしかするともっと短い時間で)水たまりなどはなくなっています。これはきっと、以前にもご紹介したことのある沖縄の地盤成分の「琉球石灰岩(りゅうきゅうせっかいがん)」によるものだと思われます。

今回は、沖縄本島中部・読谷村(よみたんそん)にある「やちむんの里」をご紹介します。やちむん職人さん達が「あるもの」に吸い寄せられるよう、集落をつくっていました。

「それでもあの窯を使いたい」

「やきもの(焼き物)」を沖縄風の発音で言うと「やちむん」になります。

つまり、陶器のことです。

その歴史は古く、またしても琉球王国時代までさかのぼります。

1682年、尚貞王(しょうていおう)が焼き物産業を発展させようと、現在の那覇市「壺屋(つぼや)」という場所に陶工たちを集めました。

やちむんの原点「壺屋焼」の始まりです。

伝統模様の「菊唐草(きくからくさ)」。自然をモチーフにしたやちむんが多くみられました。

琉球王国から沖縄県となったとき、県外から安価な陶器が手に入りやすくなったため、壺屋焼はいったん衰退の道をたどります。

しかし、1926年に提唱された「民藝運動(みんげいうんどう)」で息を吹き返します。

「魚紋(ぎょもん)」の線彫り。人気・知名度ともに高く、子孫繁栄を意味する縁起物。

民藝運動とは、「名も無き職人たちが作った日常生活の道具は、美術品に負けないくらい美しい」ということを提唱したものです。

しかし、またしても壺屋焼職人に逆風が吹きつけます。

「点打ち」や「ドット」といわれる絵付け。

1970年代、陶器を焼くときに出てくる煙が公害問題として取り上げられてしまいます。

職人さん達は「あるもの」を失ってしまいます。

やちむんの里の「登り窯」

あるものとは、「登り窯(のぼりがま)」という陶器を焼く窯(かま)です。

熱の対流を起こし、陶器を均一に焼くことが出来るそうです。

文化村構想を進めていた読谷村が発案し、職人さん達に登り窯の建設を勧めました。

この窯を求めた職人さん達は、読谷村へと拠点を移し始めました。

そしていつしか、多くの工房や販売店舗が集まる集落となり、「やちむんの里」と呼ばれるようになります。

ギャラリーを併設した工房が立ち並んでいます。中にはカフェを併設する工房もありました。

「やちむんの美しさ、手になじむ感触を日常用品として味わってもらいたい」

そんな職人さんたちの素朴ながらも熱い想いが伝わってくるようでした。

現在はさらに北へ、沖縄本島北部の大宜味村(おおぎみそん)へと工房を移す職人さんもいるのだとか。時代の流れの中で柔軟に対応しながら、これからも「やちむん」を伝え続けていくのでしょう。

「喫茶&ギャラリー まらなた」。60名ほどの作家さんの作品を取り扱っていました。

美しさの中にある温かさ

私がやちむんの里の中で特に印象に残った職人さんのギャラリーから、2つご紹介したいと思います。

まずは「常秀(つねひで)工房」さんです。

工房に隣接する「うつわ家」はこじんまりとしたギャラリーながら、色鮮やかで様々な形をしたやちむんがずらり。

中でも、個性的な「点打ち」や「蝋抜き(ろうぬき)…溶かしたロウで模様を隠す技法」のお皿が近代的でとても印象的でした。

ここは、前述の公害問題の際に読谷村へと工房を移し、沖縄初の人間国宝となった故・金城次郎さんの窯です。

現在は孫の藤岡香奈子さんが「ふじ」という工房を構えています。

鮮やかで力強い青色に、しばらく立ち尽くしてしまいました。

そして、やちむんの里で沢山のやちむんを見ているうち、なぜか幸せな気持ちになってきたのです。

それはきっと、「日常生活の道具」の中にある温かさを感じられたからだと思います。

沖縄にもあった、日本そば屋さん

最後に、「日本そば」のお店をご紹介いたします。

沖縄と言えば「沖縄そば(ソーキそば)」ですが、どうしても「日本そば」を食べたいという欲求にかられてしまうことがあります。

そしてたどり着いたのが、ここです。

嘉手納(かでな)町役場から徒歩2~3分の場所にあります。

「日本そば工房 せい家」さんです。

店主は女性の方で、なんとご出身が、福島県の会津(あいず)ということで、私と同じ東北出身の方でした。

お客さんも内地(ないち…沖縄以外の日本のことを指して使われます)出身者が多いということです。

私と同じように「沖縄はもちろん大好きだけど日本そばが時々無性に食べたくなる」ひとたちが足を運ぶのでしょう。

「日本そば せい家」さん近くの路地裏。

こうゆう通り、個人的に大好きです。

静かでありながら、生活の温かみを感じられるからでしょうか。

それではまた、次回にお会いしましょう。

新着

新着

注目の記事

広島県

芸術

【世界で最も美しい美術館】下瀬美術館がユネスコ最優秀賞のベルサイユ賞を受賞!

ユネスコ本部で創設された建築賞<ベルサイユ賞>の「世界で最も美しい美術館」7施設にノミネートされていた下瀬美術館が、12月2日にユネスコ本部での表彰式で最優秀賞のベルサイユ賞を受賞しました。

<ベルサイユ賞授賞式のオフィシャル映像>

ユネスコで創設された建築賞である<ベルサイユ賞(世界ベルサイユ賞機構)>の表彰式が12月2日にパリのユネスコ本部にて開かれ、10周年を迎える2024年に新たに設けられた「Museums」(美術館・博物館)のカテゴリーにおいて、下瀬美術館(広島県大竹市)が最優秀賞であるベルサイユ賞を受賞しました。

〇ベルサイユ賞ホームページ
https://www.prix-versailles.com/2024

--

買い物

食べ物

【木村屋】クリスマス期間限定で「スノーマン」が登場 伝統の酒種生地と和の素材を使用した「和のシュトーレン」は今年も販売

12月はクリスマスを彩るパンが多数登場。笑顔がかわいいスノーマンは、カスタークリームとチョコクリームの2種類の味が楽しめるスイーツパンです。子供から大人まで楽しめる味わいで心温まる美味しさをお楽しみいただけます。

そして、昨年もご好評をいただいている人気商品「和のシュトーレン」が今年も登場します。柿、いちじく、こしあんなど和を感じさせる素材にこだわった、木村屋でしか味わえない特別なシュトーレンです。この機会にぜひ、木村屋のクリスマス限定パンをお試しください。

広島県

芸術

【ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち】村上隆 x 三潴末雄氏対談「芸術起業論を超えて」/三潴氏インタビュー「日本人による日本文化の価値の再発見を」

ひろしま美術館で開催中の「ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち」(開催期間:2024年11月2日〜12月22日)。草間彌生や村上隆、会田誠、奈良美智、塩田千春、加藤泉、山口晃、小松美羽、など日本現代アート界をリードする錚々たるアーティストの作品が集結した。来場者はすでに1万人を突破するなど、注目を集めている。

HYAKKEIはリーガロイヤルホテルで行われた現代アーティスト村上隆と本展示企画者である三潴末雄(みづますえお)氏との対談を取材、そして三潴氏の単独インタビューを敢行した。

そこで語られたのは、ジパング展にかける想い、日本のアート界のみならず日本人自身の価値を再発見する為の未来への提言であった。

京都府

飲食店

イベント

【京都 アートグレイス ウエディングヒルズ】夜空に浮かぶ満月をイメージした「うさぎのお月見パフェ」付き『はんなりお月見アフタヌーンティー』

結婚式場「京都 アートグレイス ウエディングヒルズ」では、2024年9月の特定日に、十五夜のお月見をイメージしたスイーツとセイボリーを楽しむ『はんなりお月見アフタヌーンティー』を販売します。

ピックアップ

ピックアップ