神奈川県

伝統

文化

観光

【東海道五十三次ふらっと-flat-完歩】Vol10.藤沢宿~大磯宿 <後編> 今も昔も愛の聖地、平塚・大磯物語

『東海道五十三次ふらっと-flat-完歩』とは…
ふとしたきっかけで東海道を歩き、その魅力に目覚めた筆者が、旧東海道に沿って、五十三次、約500㎞をテキトーに歩き、永い歳月をかけてついに完歩してしまった感動巨編!(ただし全米は泣かない)。

時間がある時にぶらっと出かけて、気の向くままに歩くシステム。よって歩く順番もランダム。名所旧跡を語るより、街道沿いの人々や風俗(変な意味ではない・・・と思う)、B級スポットなどを、ときどき妄想も入れつつ紹介し、いつか現代の十返舎一九と呼ばれたい。

旧東海道の知られざる愛のスポットを巡り平塚から大磯宿へ。大磯って初めて歩いたんだけど、素晴らしい場所。昔から政治家や文化人が好んで居を構えていた理由がわかるような気がしました。

穏やかな高麗山と穏やかじゃない湘南平

七夕で有名な平塚。
かつて桓武平氏の祖、平真砂子がここで没した際、塚を築いて弔ったため、もとは「たいらつか」と呼ばれていたようです。

駅前の繁華街は賑やかですが、市街地を抜けると、やがて街道の向こうに高麗山(こまやま)が見えてきます。

そこは唐・新羅の連合軍に滅ぼされた高麗の王族が住んだところだと言われています。

広重の平塚宿にも描かれていますが、今でも旅情を誘う眺めですね。

高麗山を間近に見ながら花水川を渡る手前で大磯町に入ります。

いやー、このあたりは穏やかでいい場所だなあ、と思ってたら、なんだが穏やかじゃない看板発見したぞ。

この名前、どこかで聞いたことありませんか?

湘南平(しょうなんだいら)は、神奈川県の平塚市と大磯町の境にある標高181mの丘陵で、高麗山と泡垂山(あわたらやま)の山頂一帯のことですが、神奈川県民は、誰もが一度は若気の至りで、ここに来て相模湾と平塚の夜景をバックに愛をささやいている、とまで言われているムフフの聖地なのです。

僕も、もし愛をささやく相手が隣にいたならば、3.5kmの山道を奮発して歩いて、20年前を思い出してやんちゃしちゃおうかな、とも思ったのですが、そんな奇特な人はどこにもいないようなので、そのままテキトー散歩を続けます。

大磯に入ると、国道沿いも、急に鄙びた感じになりますね。

虎御前悲恋の地、化粧坂

化粧坂(けしょうざか、じゃなくって、けわいざかと読みます)の交差点から再び旧街道に入ります。

「化粧坂」といえば鎌倉の切通しが有名ですが、この大磯の化粧坂は「虎御前の化粧井戸」がその由来。

「虎御前」とは鎌倉時代の仇討ち物語として有名な『曽我物語』の主人公、曽我十郎の恋人とされる「虎女」のこと。

虎女は17歳のとき大磯の長者にもらい受けられ遊女となりますが、十郎と恋に落ち、彼との逢瀬の前に彼女が化粧する際に使用していたとされる井戸が旧東海道に残っています。

歌川国貞 東海道五十三次之内 大磯之図

遊女と言っても「♪今日は吉原、堀之内 中洲、ススキノ、ニューヨーク♪」とかにいる遊女ではありませんよ。

鎌倉時代の遊女とは歌舞などの技芸を磨き、時には教養も身につけた知識人の女性のこと。神聖な存在として巫女の代わりをするようなこともあったそうです。

「大磯の虎御前」は曽我十郎の悲劇の死のあとも一途な愛を貫き、街道一の遊君としてその名を馳せたと言われています。

化粧坂のこの松並木、見てくださいよ。

舗装道路じゃなかったら、かなり江戸当時の雰囲気が出るんじゃないでしょうか?

東海道線のガード下をくぐって、立派な松並木の道を歩いて再び国道1号に入ると、やがて大磯の町なかに入ります。

今日は大磯でゴールということにして、せっかくなので街道を外れてちょっと海まで行ってみることにしました。

ちょうど夕暮れの時間帯で、淡いピンク色に染まった海もなかなかの眺めでした。向こう側に見えるのは伊豆半島の山々ですね。

大磯は昔から政治家や文化人が好んで居を構えていた場所ですが、今回初めて大磯を歩いてみてなんとなくその理由がわかるような気がしました。

海があって山があって、静かな街道沿いに伝統的な町並みと文化の香りがある。
この3つがしっかり揃っていて、東京から一番近いところがこの大磯だったのでしょう。

田舎だ、と侮るなかれ大磯。
なかなかいい街ですぞ。老後に別荘でも買ってみたい場所No.6に追加することにしました。

今回の結果:藤沢宿~大磯宿 16.7kmを制覇! 
実際の歩行距離は寄り道入れて23.68km、所要時間5時間13分、消費カロリー1274cal
東海道ふらっと完歩まで:現在の合計 65.8㎞/495.5km

Vol 11.へ続く
< Vol9.藤沢宿~大磯宿 <前編> 虫の良すぎる藤沢宿とか南湖の左富士とか

新着

新着

注目の記事

熊本県

日本情報

【阿蘇郡南小国町】黒川温泉周辺に登場した新施設やリニューアル店のご案内

黒川温泉(熊本県南小国町)とその近郊で最近新しくオープンした施設やリニューアルしたお店をご紹介します。どのスポットも黒川温泉街から車で約5~10分圏内にあるので、温泉巡りの合間に気軽に立ち寄れます。老舗旅館が手掛ける新店舗や、自然豊かな里山カフェ、地元食材にこだわったレストランなど、多彩な魅力が満載です。黒川温泉の新たな楽しみとしてチェックしてみてください。

栃木県

日本情報

渋滞を避けて早朝の奥日光の紅葉を楽しむ「SPACIA X NIKKO CRUISERが紡ぐ早朝紅葉鑑賞の旅」発売

2025年10月より日光エリアにおける新たな二次交通サービスとして、ハイグレード貸 切バス「SPACIA X NIKKO CRUISER」の運行を開始いたします。 運行開始を記念し、東武トップツアーズ株式会社では「SPACIA X NIKKO CRUISERが紡ぐ 早朝紅葉鑑賞の旅」を企画、2025年9月12日(金)より発売いたします。

全国

イベント

戦後80年。先人達が命懸けで遺した”普通の日常”の尊さを想う。映画「雪風 YUKIKAZE」2025年8月15日(金)より全国公開。

「生きて帰る 生きて還す」
多くの命を救い続けた、駆逐艦「雪風」の史実に基づく物語『雪風 YUKIKAZE』が戦後80年の節目となる2025年8月15日、全国公開される。公開に先立ちソニー・ピクチャーズ試写室でマスコミ先行試写会が行われた。

太平洋戦争中に実在した駆逐艦「雪風」。戦場で海に投げ出された多くの仲間の命を救い帰還させ、戦後まで生き抜き「幸運艦」と呼ばれた雪風と、激動の時代を懸命に生きる人々の姿を壮大なスケールで描く。

主演は「雪風」の艦長・寺澤一利を演じる竹野内豊。先任伍長・早瀬幸平を玉木宏が演じるほか、奥平大兼、田中麗奈、石丸幹二、益岡徹など実力派俳優が共演。そして戦艦大和と運命を共にした帝国海軍・第二艦隊司令長官、伊藤整一を中井貴一が圧倒的な存在感で演じ切る。

時代が再び、分断と暴力に揺れる現代。本作は「同じ過ちを繰り返す道を歩んではいないか」と、彼らが命をかけて守りたいと願った”今”を生きる私達に問いかける。戦後80年、戦争の記憶が薄れゆく今だからこそ、尊い平和の価値を未来に繋ぐ作品『雪風 YUKIKAZE』を多くの方にご覧いただきたい。

広島県

芸術

下瀬美術館「周辺・開発・状況 -現代美術の事情と地勢-」展/インタビュー後編:吉村良介氏, 高橋紀成氏, Mario Christiano氏, Stefano Pesce氏

2023年に広島県大竹市に開館した下瀬美術館。厳島、瀬戸内海に面し、世界的建築家である坂茂(ばん・しげる)氏が設計を手がけた当美術館は、2024年12月に「世界でもっとも美しい美術館」としてヴェルサイユ賞を受賞し大きな注目を集めた。

この下瀬美術館で「周辺・開発・状況 -現代美術の事情と地勢-」展2025年4⽉26⽇(土)から7⽉21⽇(⽉・祝)が開催され、開幕10日で来場者数1万人を越え、同館最速の記録となり盛況を博している。

1980年〜2000年生まれのアジアの若手アーティストの作品群により構成される本展はヴェルサイユ賞受賞を記念して行われる特別展示であり、下瀬美術館にとって初の現代芸術展というチャレンジングな展示でもある。

前編に続き、下瀬美術館の代表理事を務める吉村良介氏、同じく下瀬美術館のボードディレクター高橋紀成氏、そしてイタリアNo1ギャラリーGalleria ContinuaオーナーMario Cristiani氏、Mark Tobey財団ディレクター兼アートアドバイザー/Stefano Pesce氏のインタビューをお届けします。

広島県

芸術

下瀬美術館「周辺・開発・状況 -現代美術の事情と地勢-」展/インタビュー前編:チーフキュレーター齋藤恵汰氏

2023年に広島県大竹市に開館した下瀬美術館。厳島、瀬戸内海に面し、世界的建築家である坂茂(ばん・しげる)氏が設計を手がけた当美術館は、2024年12月に「世界でもっとも美しい美術館」としてヴェルサイユ賞を受賞し大きな注目を集めた。

この下瀬美術館で「周辺・開発・状況 -現代美術の事情と地勢-」展2025年4⽉26⽇(土)から7⽉21⽇(⽉・祝)が開催され、開幕10日で来場者数1万人を越え、同館最速の記録となり盛況を博している。

1980年〜2000年生まれのアジアの若手アーティストの作品群により構成される本展はヴェルサイユ賞受賞を記念して行われる特別展示であり、下瀬美術館にとって初の現代芸術展というチャレンジングな展示でもある。

HYAKKEIは開催直後の当展を訪問し、チーフキュレーターである美術家の齋藤恵汰氏のインタビューを敢行。「日本の美術界に一石を投じる企画にしたかった」と語った。

ピックアップ

ピックアップ