【東海道五十三次ふらっと-flat-完歩】Vol.24 府中宿~藤枝宿前編 丁子屋のとろろと十返舎一九先生

『東海道五十三次ふらっと-flat-完歩』とは…
ふとしたきっかけで東海道を歩き、その魅力に目覚めた筆者が、旧東海道に沿って、五十三次、約500㎞をテキトーに歩き、永い歳月をかけてついに完歩してしまった感動巨編!(ただし全米は泣かない)。

時間がある時にぶらっと出かけて、気の向くままに歩くシステム。よって歩く順番もランダム。名所旧跡を語るより、街道沿いの人々や風俗(変な意味ではない・・・と思う)、B級スポットなどを、ときどき妄想も入れつつ紹介し、いつか現代の十返舎一九と呼ばれたい。

なにを隠そう、僕が一番最初に旧東海道に沿って歩いたのはこの区間。とある年の夏、甲子園に行こうと思ったら途中で台風に足止めされ、偶然この感動巨編がスタートしたのでした!

東海道ふらっと-flat-完歩は偶然の産物

とある年の夏休み、青春18きっぷを使ってブラブラしながら甲子園に高校野球でも見に行こう、と朝早く家を出ました。

台風が西日本に接近していることはわかっていたのですが、駅の改札で青春18きっぷの第1日目の使用欄にスタンプを押してもらい、ホームに降りたとたん、台風のため甲子園の開幕がなんと2日間も順延、というYahooニュースを発見したのです!

マジかよ、青春18きっぷ、1日分使っちゃったじゃんよ!

しかも台風が接近する中、わざわざ大阪に向かっても甲子園が開幕するまで何して過ごせばいいのか甚だビミョーです。
このまま家に帰って、台風が過ぎてから出直す方があきらかに賢明でした。

しかし、僕はそのまま足を前に進めました。もう引き返しません。
このまま先に進んで甲子園まで行こうと、家に帰ってふて寝しようと、青春18きっぷの一日分を消化することには変わりないのです。

僕がちょうどそのちょっと前に読んでいた本が、久住昌之さんの「野武士、西へ 二年間の散歩」という本。
それは、とある漫画家が、東京から大阪までなんとなく東海道に沿って散歩で踏破する紀行エッセイなのですが、一挙に歩くのではなく、二年間かけて細切れに何回にも分けて歩く話で、歩く区間も距離もその日の風まかせ。唯一のルールは地図やネットは見ずに、勘だけでトライしてみる、ということくらい。
そんな感じの本なのですが、これが妙に楽しそうだったのです。

決めた!俺も東海道をちょっと歩いてみよう。
確か静岡あたりになんだかすごくいい区間があったな。

そんなわけで始まったのが、この東海道ふらっと-flat-完歩。
もちろんこの時は全区間歩くなんて思いもしませんでしたが。

そして静岡の駅に降り立ったのが11時ちょっと前。
まだこのあたりは台風の影響はありません。

いきなり東海道五十三次の世界へ

まずは静岡の駅から北に5分歩き、徳川家康公に敬意を表して駿府の城跡から出発します。

現在の静岡市内の中心部のあたりを昔は府中宿と言いました。
旧東海道地図をなぞって歩くと、最初は伊勢丹のある繁華街を通ります。

旧東海道とは思えないスタートですが、地図に従って道を一本曲がり旧道に入ると急になんとなくそれらしい感じになり、西にずっとまっすぐに進むと、やがて安倍川の大きな橋が見えてきます。
駿府城からここまで約30分。

安倍川といえば、あべ川もち。
橋のたもとに、2、3軒のお餅屋さんが並んでいます。

そのうちの1軒、おばあさんがひとりでお餅を作っていた店に入ります。
昼食の時間が近いので、ここでおやつを食べるわけにいかないのですが、もち好き&きなこ好きの僕としては、本場のあべ川もちを目の前にして買わないわけにもいきません。
峠越えの非常食用としてきなこ2個、あんこ2個を買いました。400円。

安倍川を越えると、静岡の市街地は終わり、なんとなく旧街道沿い独特の雰囲気が出てきます。
府中(静岡)を出て最初の宿場は丸子宿。

丸子と書いて、MARIKO、と読みます。
鞠子と書くこともあったようですが、なかなかかわいい名前です。

丸子のバスの営業所のあたりは、まだまだ静岡市郊外のちょっとした住宅地といった雰囲気がありますが、街道をさらに奥に進むと、やがてかつての丸子宿の集落に入ります。

ここは東海道で一番小さい宿場町だったとのことですが、この先にある宇津ノ谷峠の山々を背にした、全長2~300mあまりのこじんまりとした町並みでした。

丸子の宿場町を越えて、街道が丸子川と交わるところに、安藤広重の東海道五十三次にも描かれた歴史あるとろろ汁屋「丁子屋」がありました。

あまり食には興味がない僕ですが、久住さんが「野武士、西へ 二年間の散歩」の中で、運悪く食べられなかった、と嘆いていたのを読んで、せっかくだから食べてみよう、と思っていたのでした。

店内は思ったよりずっと広く、奥のほう、2階のほうにもたくさんの部屋があります。

基本のメニューは、このとろろ御膳、1440円也。

とろろとご飯でこの値段、高いと言えば高い。
でもなんとなく仕方ないのかな、と思ってしまう。
これが伝統の力なのでしょうか…

温かいご飯に、とろろ。
何も足さない、何も引かない。そんな感じ。

店内には古い資料館みたいなスペースもあって、そこにいたのが十返舎一九先生。

十返舎一九、東海道中膝栗毛、
滝沢馬琴、南総里見八犬伝。
中学の時によくセットで覚えましたよね。

東海道中膝栗毛の碑もお店の前にあるので「弥次さん、喜多さん」もここに立ち寄ったのでしょうか?

安藤広重、十返舎一九、そして僕。
なんだか僕も東海道の旅を後世に残さなくてはならないような気がしてきたのは、この時でした。

<2014年8月訪問> 記事の情報は訪問当時のものです。最近の情報は公式サイト等でご確認ください。

Vol.25へ続く
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