東京都

芸術

高精細複製品によるあたらしい屏風体験「国宝 花下遊楽図屏風」  東京国立博物館にて限定公開[7月1日(水)、2日(木)]

2020.07.01

国立文化財機構 文化財活用センター<ぶんかつ>は、東京国立博物館(上野公園)にて、高精細複製品によるあたらしい屏風体験「国宝 花下遊楽図屏風(かかゆうらくずびょうぶ)」を、申込み者に限定して公開。

【初公開!失われた部分を復元した「花下遊楽図屏風」】

満開の桜の下で花見を楽しむ人々の姿が描かれた国宝「花下遊楽図屏風」。その高精細複製品を中心に、プロジェクションマッピング映像と音響演出による幻想的な空間を体感していただく展示です。

国宝「花下遊楽図屏風」は、向かって右側(右隻)に、満開の桜の下で貴婦人を中心とする酒宴のさまを、左(左隻)には風流踊り(ふりゅうおどり)と、それを眺める人々を描いています。踊る人々が着ているのは、「かぶき踊り」の流行を受けた当時最新のファッションです。樹木や岩などは水墨を中心に落ちついた表現であるのに対し、人々は金泥を用いてきらびやかに描かれた衣装を身につけています。

原本は17世紀はじめ頃、およそ400年前に描かれた貴重な作品ですが、大正12年(1923)の関東大震災の時に、右隻の中央部分が失われました。展示される高精細複製品は、消失前の姿を映した明治時代のガラス乾板の画像から失われた部分を復元したもので、今回が初公開となります。

*この展示は、特別展「体感!日本の伝統芸能」(2020年3月10日~5月24日/主催:文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会、東京国立博物館、文化財活用センター、読売新聞社)の一部として企画されました。新型コロナウイルス感染防止のため、残念ながら同展が開催中止となったことに伴い、本コーナーのみ、体験モニターに限定して公開することといたしました。

■国宝 花下遊楽図屏風について■

国宝 花下遊楽図屏風(左隻部分)狩野長信筆 江戸時代17世紀 東京国立博物館蔵
花下遊楽図屏風は江戸時代のはじめ頃のお花見の様子を描いた屏風です。踊っているのは、最新のファッションに身を包んだ女性たち。刀を腰にさしているのは男装の一団です。歌舞伎の源流となった当時流行の阿国(おくに)歌舞伎の伊達姿を写しているのでしょう。

足裏を見せて踊る人物の描写は、まさにストップモーション。三味線に手拍子も加わって、ほがらかな歌声まで聞こえてきそうです。自然を愛で慈しみ、春を謳歌する日本人の心を見事にとらえ、現代に生きる私たちも心が躍り、歌いたくなるような作品です。

作者は、狩野長信(1577-1654)と知られています。京都を中心に活動していた狩野派、狩野永徳の末弟にあたる長信は、徳川家康より駿府(静岡市)に召しだされ、その後初めて江戸に下りました。長く江戸幕府の御用をつとめますが、現存する作品が少ないため、本作は貴重な基準作といえます。

大正12年(1923)の関東大震災のとき、花下遊楽図屏風の右隻中央2扇分が失われました。現在は消失した部分に無地の紙を補って屏風に仕立てられています。これまでの展示ではこの作品のハイライトである女性たちの語らいの場面をお見せすることはできませんでした。

■花下遊楽図屏風の消失部分復元について■

国宝 花下遊楽図屏風 狩野長信筆 東京国立博物館 本館国宝室にて展示(2019年)

花下遊楽図屏風の完全な姿を唯一伝えるのが、明治44年(1911)頃に撮影されたガラス乾板写真(東京国立博物館蔵)です。原寸大まで画像を拡大するために、高解像度スキャナーにより画像データを取得しました。

スキャニングは右隻全体を2400ppiで1回、消失部分のみを1200ppiで1回、さらに4800ppiで7回行い、それらのデータを重ねて画像をクリアにする処理を施し、原寸大の印刷に耐える高解像度の白黒画像データを制作しました。

花下遊楽図屏風を撮影したガラス乾板写真 明治44年頃 東京国立博物館蔵

次に取り組んだのが色の再現です。最初は、今回キヤノン株式会社が撮影した現存部分のカラーデータをもとに、デジタル処理による色変換を試みました。
しかし、消失部分のデータと現存部分のデータのカラーバランスやコントラストなどが異なるため、うまくいきませんでした。

そこで、現存部分のカラーデータを近似値の白黒スケールにいったん変換し照合することによって、消失部分の色のバランスを明らかにすることができました。

花下遊楽図屏風抜写 溝口禎次郎筆 明治時代 東京国立博物館蔵

この処理によって桜花や幹、地面など、現存する画面に同一のモチーフがある部分については、デジタル処理による色の再現が可能になりました。しかし、人物の衣装など、固有のモチーフについては色のバランスはわかっても、どの系統の色なのかまでは現在の技術ではわかりません。
わずかに残されていた手がかりは、明治時代にこの屏風の部分を模写した「花下遊楽図屏風抜写」にある、地赤・白・ロク(緑)などの書き込みです。

そこで、白黒の画像データから、映画やテレビ、CMなどにも使用されているRayBrid(レイブリッド)という技術を使用してモチーフを切り出し、色の根拠がある部分のみ彩色を施しました。
今回の復元複製については、あくまで科学的な数値と記録に基づくデジタル処理による色の再現にこだわった結果、一部は白黒のまま残すという、今までにないかたちとなりました。

ガラス乾板写真から高解像度スキャナーでデータを取り、原寸大に拡大 国宝 花下遊楽図屏風(右隻)。※白黒部分はガラス乾板写真の合成、彩色前
色の根拠がある部分のみ、デジタル処理によって色を再現【高精細複製品】国宝 花下遊楽図屏風(右隻)

【画像】

原本撮影
屏風制作:
キヤノン株式会社・京都文化協会
ガラス乾板
スキャニング:
アイメジャー株式会社
復元部分
CG制作:
株式会社エム・ソフト
プロジェクションマッピング: 有限会社プロトタイプ

【高精細複製品を用いた日本の文化財活用のための共同研究プロジェクト】
高精細複製品「国宝 花下遊楽図屏風」は、独立行政法人国立文化財機構 文化財活用センターとキヤノン株式会社が2018年度より行なっている「高精細複製品を用いた日本の文化財活用のための共同研究プロジェクト」で制作しました。オリジナル作品を劣化から守りつつ、多くの方に日本古来の貴重な文化財に親しんでいただくことを目的として、キヤノン株式会社ならびに特定非営利活動法人京都文化協会が共同で行なっている「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の技術を使用しています。
>ぶんかつ&キヤノンプロジェクト

【文化財活用センター】
文化財活用センターは国内外のさまざまな人が、日本の文化財に親しむ機会を拡大するため、2018年7月、国立文化財機構のもとに設置された組織です。愛称は<ぶんかつ>。文化財を通じて豊かな体験と学びを得ることができるよう、文化財を活用した新たなコンテンツやプログラムの開発を行なっています。また、国立博物館の収蔵品の貸し出しを促進する事業や、文化財のデジタル情報の公開、文化財の保存環境に関する相談窓口を開設しています。

>ぶんかつ公式サイト
>Twitter
>Instagram
>YouTube

あなたにオススメ

新着

新着

注目の記事

神奈川県

買い物

食べ物

老舗和菓子屋がサブスク!? 名物ゴーフレット『鎌倉半月』が定期的にたっぷり届きます

鎌倉の老舗和菓子屋「鎌倉五郎本店」がサブスクリプションを開始いたします!『鎌倉半月』は、お菓子の通販サイト「パクとモグ」で16年連続ご注文数第1位を獲得した大人気スイーツ。地元・鎌倉では「半月さん」と呼ばれたりするほど愛されている代表銘菓です。その『鎌倉半月』から、定期的に届く『鎌倉半月たっぷり定期便』が誕生しました。
「鎌倉五郎本店」のシンボルである月うさぎが、みなさまのご自宅に鎌倉スイーツをお届けします。一般販売の受付は3月25日(木)よりオンラインショップで開始。みんながハマるこの味を是非サブスクでお楽しみください。

静岡県

飲食店

まるで銭湯!? 熱海温泉がテーマの“チーズスイーツ”専門店が初登場! チーズファクトリー「熱海ミルチーズ」3/20(土・祝)オープン

株式会社フジノネは、「熱海温泉」と「お風呂」をテーマにチーズとお風呂の定番『牛乳』を使用した本格チーズスイーツをお楽しみいただけるチーズケーキファクトリー「熱海ミルチーズ」を2021年3月20日(土・祝)10時よりグランドオープンしました。
当店は、熱海スイーツブームの先駆けとも言われる「熱海プリン」がプロデュースしており、熱海ならではのレトロ可愛い“新感覚チーズケーキ”を多数お届けします。

神奈川県

観光

横浜・石川町のゲストハウス「ヨコハマホステルヴィレッジ」の屋上プライベートガーデンがグランピングテントを設置した『BEANSTALK(ビーンストーク)』としてリニューアル

国内外のバックパッカー向けのゲストハウス「ヨコハマホステルヴィレッジ」の屋上が、遠出をせずに身近で気軽に非日常体験を味わえる都市型グランピング空間「BEANSTALK(ビーンストーク)」してリニューアル。通常のゲストハウスの宿泊プランとセットで販売開始。

京都府

伝統

観光

文化

【東海道五十三次ふらっと-flat-完歩】Vol.53 大津~三条大橋 後編 そしてゴールの三条大橋へ!涙の完結編!

『東海道五十三次ふらっと-flat-完歩』とは…
ふとしたきっかけで東海道を歩き、その魅力に目覚めた筆者が、旧東海道に沿って、五十三次、約500㎞をテキトーに歩き、永い歳月をかけてついに完歩してしまった感動巨編!(ただし全米は泣かない)。

時間がある時にぶらっと出かけて、気の向くままに歩くシステム。よって歩く順番もランダム。名所旧跡を語るより、街道沿いの人々や風俗(変な意味ではない・・・と思う)、B級スポットなどを、ときどき妄想も入れつつ紹介し、いつか現代の十返舎一九と呼ばれたい。

いよいよ東海道ふらっと完歩涙のゴール!テキトーに細切れに、都合2年間かけて京都三条大橋に到着しました。始めた頃は本当に完歩するか半信半疑だったけど、こうしてコンプリートできたってことは、それだけ旧東海道が魅力的だったんだなと思います。日本人なら一度は東海道ふらっと完歩、やるべきだと思います(笑)

東京都

買い物

食べ物

今年はおうちで春を楽しもう! 東武百貨店で“イエナカお花見”を楽しめる商品

東武百貨店 池袋本店では桜の開花を目前に控えたいま、お花見を楽しむ商品を充実させており、2021年3月18日(木)より食品フロアで開催している「SAKURAふぇす」では、春らしい東武限定品のお弁当やオードブル、スイーツを販売します。その他、桜をイメージした食器や、桜の盆栽など、イエナカお花見を演出するアイテムを展開しています。
昨年に続き本年も、コロナ禍で外でのお花見を楽しむことが難しい状況が続いています。そこで当店では、「イエナカお花見」で春の訪れを感じてもらえる商品展開に注力しています。

ピックアップ

ピックアップ